小山田城(おやまだ)
 別称  : なし
 分類  : 平山城
 築城者: 小山田有重
 遺構  : 曲輪跡、土塁、堀、土橋、虎口
 交通  : 小田急線町田駅よりバス
       「大泉寺前」バス停下車徒歩10分


       <沿革>
           坂東八平氏の1人秩父重弘の子別当有重は、武蔵国小山田荘に移り小山田氏を称した。有重は、
          承安元年(1171)に荘内に館を構えたと伝わる。現在の大泉寺はこの有重の館跡といわれる。同じく
          承安年間(1171〜74)ごろ、小野路城を築いて次男重義を配した。
           源平の争乱に際して、小山田一族は当初平家方に属していたが、後に源頼朝に与し、鎌倉幕府の
          創建に大きく貢献した。しかし、元久二年(1205)の畠山重忠の乱によって、同じ平姓秩父氏の一族
          である小山田氏は重忠に味方し、ほとんどが討ち取られた。
           これにより小山田氏は没落したが、元弘三年(1333)に新田義貞が鎌倉幕府追討の軍を起こした
          とき、義貞に従った武士の中に小山田太郎高家の名が見える。高家は、有重の七男森行重の後裔
          と伝わるが、確かではない。高家を含む新田軍は、北条泰家の手勢が籠る小山田城を攻め落とし、
          一路鎌倉へ向かったといわれる。『太平記』には、高家が建武三年(1336)の湊川の戦いで義貞の
          身代わりとなって壮烈な討ち死にを遂げたと記されている。
           同じころに足利尊氏に従って活躍した上杉頼重の子頼成は、一般的には千秋上杉家の祖として
          知られているが、近年、頼成の系統は小山田上杉家とも呼ばれている。小山田周辺に所領をもって
          いたことによるものと推測されるが、小山田城を使用していたかは詳らかでない。
           文明八年(1476)に長尾景春の乱が勃発すると、景春・古河公方方に属した小沢城や溝呂木城に
          対する扇谷・山内両上杉氏の防衛拠点として、小山田城が再び取り上げられた。翌九年(1477)三月
          には、景春の家臣宝相寺(名は不明)・吉里宮内左衛門尉らが小山田城を攻め落とした。
           その後の小山田城については不詳である。戦国期の小山田氏といえば、甲斐国郡内地方を本拠
          とし、天正十年(1582)の織田信長の武田攻めに際して、武田勝頼を裏切って武田氏滅亡の直接的
          要因をつくった小山田信茂が知られている。この郡内小山田氏は、畠山重忠の乱での誅伐を逃れた
          一族の後裔といわれるが、はっきりしたことは分かっていない。永禄二年(1559)成立の『小田原衆
          所領役帳』には、「小山田弥三郎」が「他国衆」として小山田荘を中心に419貫余の知行を得ている
          ことが記されている。この弥三郎について、信茂の兄ないし父とされる弥三郎信有と同一人物である
          とする見解が有力視されている。ただし、郡内小山田氏は武田家臣であるため、北条領内の小山田
          領が実際にはどのようなものであったのかについては諸説あり決着をみていない。



       <手記>
           大泉寺境内が小山田氏の居館跡、本堂北西裏手の山が小山田城址です。大泉寺は、三方を山の
          峰に囲まれた、典型的な鎌倉期の館地形ですが、館跡を示す遺構は見つかっていません。
           大泉寺の墓地は、「小山田城址墓苑」と銘打って大々的に売り出していますが、境内から直接城跡
          の山へ登る道はありません。寺の西側を大きく回り、市営下小山田苗園の脇の階段を上り詰めると、
          堀・土塁・土橋・虎口のセットを見ることができます。歴史的にみれば、現在の遺構は上杉氏によるも
          のと考えられますが、小規模ながら馬出が設けられていることから、後北条氏時代までは使用されて
          いた可能性も否定できません。
           縄張りをみると、大きく2つの曲輪が並立しているような形で、南東1kmほどのところにある小野路城
          と似た造りをしています。
           小山田は、鶴見川のほぼ源流にあたり、東京都内とは思えないほどのどかなところです。北西1km
          ほどのところに鶴見川源流の泉があります。

           
 大泉寺(伝小山田有重居館跡)。
境内の小山田城址碑。 
 土塁、空堀、土橋、虎口を望む。
小山田城址南側の峰から南方をのぞむ。 


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