宮本城(みやもと)
 別称  : 大津城
 分類  : 山城
 築城者: 里見成義か
 遺構  : 曲輪、堀、土塁、虎口
 交通  : JR内房線富浦駅からバスに乗り、
      「大庭」下車徒歩10分


       <沿革>
           『房総里見誌』によれば、延徳三年(1491)に安房里見氏2代里見成義によって築かれたと
          される。しかし、成義および初代義実については実在が確認できず、存在を疑問視する声も
          根強い。遅くとも、3代とされる里見義通のころまでに築かれ、義通の弟実堯が城主であった
          とみられる。
           天文二年(1533)、実堯は義通の子義豊によって稲村城に誘殺された(稲村の変)。従来、
          若年の義豊が短慮で後見人の実堯を手打ちにしたといわれてきたが、近年の研究の結果、
          上総国金谷城へ進出した実堯が勢力を拡大したため、これを危険視した壮年の義豊が先手
          を打ったものと考えられている。
           実堯の子義堯は、後北条氏の加勢を得て反撃に転じ、義豊を犬掛の戦いで討ち取った。
          里見氏の家督を奪った義堯は、宮本城ないし滝田城を推測されている。数年後に久留里城
          へ移ると、宮本城も廃されたと考えられているが、稲村の変以降の扱いについては詳らかで
          ない。


       <手記>
           岡本川沿いの比高150mほどの城山が、宮本城跡です。上の図にある西麓の農道十字路
          に案内表示があり、東へ登ってほどなく北へ折れると、あとはほぼ一直線の登山道が延びて
          います。農道付近には駐車スペースはないので、道の駅おおつの里の駐車場に停めて行く
          とよいでしょう。駐車場脇の周辺地図にも、城跡に関する記述がみられます。
           登りはじめてまず目にするのは段々の果樹園跡で、根古屋などの削平地のようにも見える
          のですが、遺構かどうかは判断が困難です。さらに進むとはっきりとした切岸と虎口、その脇
          の低い土塁に囲まれた曲輪が現れ、狭義の城域はここからはじまるものと思われます。
           虎口の先はやや広い空間となっていて、そこからまた少し上ると尾根筋の鞍部に出ます。
          尾根を登れば主郭方面ですが、ここで尾根先側に下りると、1つはっきりした削平地が見られ
          ます。尾根筋には腰曲輪群が続き、かなりの数の段曲輪になっているとみられますが、藪が
          ひどくて1段1段をはっきり見て取るのは難しいでしょう。
           登りきると主郭となり、標柱や説明板がありますが、眺望はあまり開けていません。以前は
          もう少し整備されていたようですが、今では郭内を歩き回れるだけ有難いといった感じです。
          主郭の南東隅付近に方形の土壇があり、櫓台か何かにも見えますが、あまりに土盛りが低く
          位置も不自然ながら、きれいな直線の方形に整えられているので、後世の造作の可能性が
          高そうです。
           主郭の裏手にあたる当方の尾根筋には、堀切や竪堀、土橋などの遺構が残っているそう
          です。しかしながら、私が訪れたときはド藪に阻まれてとても行けそうにありませんでした。
           宮本城は比較的規模の大きな城であり、里見義堯が一時居城としたというのも頷けます。
          一方で、里見氏のターゲットである上総方面へ目を向けると、あまり利便性のある立地とは
          いえません。北からの敵に備えるのには向いているでしょうが、北へ進出するというベクトル
          でみると、東の滝田城に拠る方が合理的といえます。宮本城の東の尾根を行けば滝田城に
          連絡できることから、あるいは両城並立して上総への進出拠点としていたのではないかとも
          考えられます。

           
 滝田城跡を南東から望む。
 左手奥の鉄塔付近が主郭(八幡台)。
駐車場脇の説明板。 
 駐車場脇の登山口。
伏姫と八房の像のあるピーク。 
 同ピークの模擬櫓台と城址標柱。
同ピークから館山平野方面の眺望。 
 八幡台後方下の堀切。
八幡台後方尾根の腰曲輪。 
 八幡台(櫓台)跡。
同櫓台跡。 
 主郭から八幡台を見上げる。
八幡台前方下の主郭。 
 主郭の礎石。
主郭前方下の城門跡とある虎口。 
 主郭前方下の腰曲輪。


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