樺沢城(かばさわ) | |
別称 : 樺野沢城、鞠子城 | |
分類 : 山城 | |
築城者: 田中右衛門尉か | |
遺構 : 曲輪、堀、土塁、虎口 | |
交通 : JR上越線上越国際スキー場前駅徒歩5分 | |
<沿革> 南北朝時代初期に、新田義貞の被官・田中右衛門尉が拠り、鞠子城と呼ばれていたともいわれる が定かでない。『新編会津風土記』によれば上杉景勝(長尾顕景)は樺沢城で生まれたとされ、父の 長尾政景の代までには、上田長尾氏の居城坂戸城の支城として築かれていたものと推定される。 天正六年(1578)、上杉謙信死後の家督を巡って景勝と上杉景虎の間で御館の乱が勃発すると、 景勝は景虎の実家である北条氏の介入を阻止するため、同年六月に荒戸城を築かせた。同年九月 には、景虎の実兄である北条氏照・氏邦が軍を率いて越後に入り、荒戸城と樺沢城を攻め落とした。 次いで北条勢は坂戸城の攻略にかかったものの、落とすことができなかった。時間を浪費するうち に冬が近づいたため、氏邦や北条高広(後北条氏ではなく越後の大江流北条氏)を樺沢城に置いて 撤兵した。 この間に武田勝頼と和睦するなど形勢を盛り返した景勝は、翌七年(1579)二月に援軍の望めない 樺沢城と荒戸城を奪回し、その翌月には景虎を鮫ヶ尾城にて自害に追い込んだ。戦後も、対北条の 前線基地として荒戸城と共に修築され、栗林政頼ら上田衆が城番を務めたと推測されるが、詳細は 不明である。遅くとも、慶長三年(1598)に上杉家が会津へ転封となった際には廃城となったと推測 される。 <手記> 現在の地名が樺野沢であることから、樺野沢城と呼ばれることも多く、また樺沢で「かばのさわ」と 読まれるケースもあるようですが、地元では「樺沢(かばさわ)城」で統一されているようです。東麓の 龍澤寺の上手に駐車場が用意され、登山道も整備されています。また、すぐ近くにJR上越線の上越 国際スキー場前駅があるので、鉄道でのアクセスも抜群です。城内や城下では上杉景勝生誕の地 として大々的にアピールされ、景勝の母・仙洞院(仙桃院)のお花畑跡なる案内もありましたが、景勝 誕生地について確証までは得られていないようです。 城内は三の丸から順に上がる道と、西ノ丸から本丸背後へ回る道があり、ぐるっと1周できるように なっています。私は後者から登って前者を下りるルートを選びましたが、後者を下りると途中で迷って しまう可能性があるように感じたので、正解だったと思います。 樺沢城は、山容は比較的緩やかなものの防御施設の規模が大きく、わけても城域を丸ごと横堀で 囲っているさまは圧巻です。本丸・二ノ丸・三ノ丸それぞれの間も長大な堀切で断絶され、私が訪れ たときには藪が茂っていて行けませんでしたが、背後の堀切を隔てた向こう側の尾根筋には、畝状 竪堀も設けられているそうです。それなりの兵力で攻防戦を行うことを想定したつくりとなっていて、 時代背景を考えると御館の乱以降に荒戸城と共に大きな改修が加えられたものと推測されます。 これだけの規模と景勝生誕の地というエピソードを抱えながら、樺沢城の歴史についてはほとんど 分かっていません。他方で、城下には根古屋や町場が比較的広範囲に形成されていたようで、今も それらに由来する字が各所に残り、集落内にはちょっと立派過ぎるような石碑が随所に建てられて います。あまり険しくない山容と三国街道沿いの立地から、街道とは魚野川を挟んており、高く険しい 坂戸城に対する里城のような位置づけで両者向かい合っていたのではないかなと、私見ながら感じ 至りました。 |
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樺沢城跡を望む。 | |
登山口と奥に元屋敷の石碑。 | |
「仙桃院のお花畑跡」標識とJR上越線。 | |
城域を囲む横堀。 | |
横堀および土塁。 | |
横堀を隔てた望楼と呼ばれる曲輪。 | |
望楼南西端の虎口状地形。 | |
虎口状地形から竪堀状に落ち込むところ。 | |
大手道沿いの竪堀。 | |
大手から三ノ丸へ入る虎口。 | |
西ノ丸の枡形状虎口。 | |
西ノ丸のようす。 | |
西ノ丸背後の空堀。 | |
西ノ丸から本丸背後へ向かう途中の腰曲輪と切岸。 | |
主城域背後の堀切。 左手奥に畝状竪堀群があるそうです。 |
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主城域最後尾の曲輪(奥)と堀切(手前)。 | |
主城域最後尾の曲輪。 | |
本丸直背の堀切。 | |
本丸跡。 | |
本丸からの眺望。 | |
本丸先端側1段下の腰曲輪。 | |
本丸下の帯曲輪。 | |
帯曲輪下の腰曲輪群。 | |
腰曲輪群と胞衣塚の間の空堀。 | |
景勝由来とされる胞衣塚。 | |
二ノ丸背後の大空堀。 | |
3段に削平されている二ノ丸。 | |
二ノ丸のようす。 | |
二ノ丸下段の虎口。 | |
三ノ丸背後の空堀。 | |
三ノ丸のようす。 | |
三ノ丸下段の小社。 | |
登りはじめてまもなくお出迎えしてくれる ふくろうの一刀彫。由来は不明です笑 |
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城下に点在する立派な石碑の1つ。 |