花沢館(はなざわ) | |
別称 : 上ノ国花沢館、花見館、花見岱館 | |
分類 : 山城 | |
築城者: 蠣崎季繁か | |
遺構 : 曲輪跡、堀、土塁 | |
交通 : JR津軽海峡線木古内駅よりバス 「大留」バス停下車徒歩10分 |
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<沿革> 安東氏によって蝦夷に置かれたいわゆる三守護のうち、上ノ国守護であった蠣崎 季繁の居城とされる。『新羅之記録』によれば、季繁は若狭武田氏の一族で、蝦夷 に流れて安東政季の娘婿となったとされる。同記によれば、享徳三年(1454)時点 で季繁は花沢館に拠っている。 他方、下北半島には蠣崎城に拠る蠣崎氏があり、こちらは南部武田氏の庶流と される。康正二年(1456)、蠣崎城主蠣崎蔵人信純は南部氏に背いて乱を起こした (蠣崎蔵人の乱)。乱は翌年に鎮圧され、蔵人は松前に逃亡したとされる。この蔵人 こそが季繁であるとする説もあるが、『新羅之記録』の記述が正しければ、時系列的 に符合しない。 また、同じく上ノ国の住人で下野国小山氏の一族とされる小山隆政の居館「花見 岱館」を、花沢館に比定する説がある。『小山家系譜』によれば、隆政は嘉吉三年 (1443)に蝦夷へ渡海しており、花見岱館と花沢館が同じものであるとすると、季繁 以前に花沢館は築かれており、隆政が館主であったことになる。隆政は、後述する 武田信広によって嘉吉三年(1459)に誘殺されている。 康正三年(1457)、コシャマインの戦いが勃発し、道南十二館と呼ばれた和人の 拠点は、花沢館と茂別館を残してアイヌの軍勢に攻め落とされた。和人勢は、季繁 の客将武田信広を中心として団結し、ついにコシャマインを討ち取るに至った。この 功により、信広は季繁の養女(安東政季の娘)を妻とし、季繁から家督を譲られた。 信広は、『新羅之記録』によればやはり若狭武田氏の武田信賢の子とされるが、 伝えられる信賢と信広の生年を比べると、2人の年齢差は12年しかなく、季繁同様 その出自は定かでない。 信広は、当初洲崎館を築いて居城としたが、後に勝山館を築いて移った。勝山館 の築城年は明らかでないが、城内に鎮座する館神八幡神社の創建が文明五年(14 73)とされることから、このときまでのことと考えられている。上ノ国の中心が勝山館 に移ったことで、花沢館は廃城となったと推測されている。その時期もまた詳らかで ないが、季繁の没年が寛正三年(1462)とされていることから、このときまでは季繁 の隠居城として存続していたものと思われる。 <手記> 花沢館は、天の川に突き出た峰の先を利用した城です。周辺の勝山館跡や洲崎 館跡と併せて、「上ノ国館跡」として国史跡に指定されています。史料に素直にした がえば、花沢館は上ノ国地域でもっとも古く、コシャマインの戦い以前には同館しか 存在していなかったことになります。 県道沿いに石碑があり、その脇から登ることができます。登りはじめてまもなく、 尾根筋に数段の削平地群が現れます。さほど堅固なつくりではなく、防御施設という よりは根小屋のような印象を受けます。 さらに登ると、おそらく城内で2番目に広いと思われる削平地に出ます。直感的には、 ここに居館が置かれていたのではないかな、と推測されます。 ここからまた、数段の削平地と思われるようなそうでもないような地形を横目にしば らく登り、本丸下の帯曲輪を経て本丸に至ります。本丸は細長く、曲輪内は平らでは ありません。最後尾に土塁があり、烽火台であった可能性が考えられます。その背後 には大きな堀切が1条穿たれています。 花沢館は、立地・縄張りともに、周辺の3館ではもっとも防衛を意識した中世城館と いえると思います。一般には、花沢館は15世紀後半には廃されていたと考えられて いますが、私はそこまで言い切るのは尚早ではないかなと思っています。 『新羅之記録』によれば、享禄二年(1529)にアイヌの酋長タナサカシが、上ノ国の 「和喜」の館を攻めたとあります。この和喜館については、当時の蠣崎氏の本拠松前 大館に対する「脇」の館であり、勝山館を指すとする見方がほぼ定説化しています。 ですが、「脇」と呼ぶには上ノ国と松前は距離が離れすぎている感があり、上ノ国の 中心的な城に対する脇の館と考えた方が、しっくりいくような気がします。そうなると、 当時の上ノ国の中心は勝山館ですから、その脇の城館とは花沢館か洲崎館という ことになります。両者を比べると、籠って迎え撃つには花沢館の方が明らかに向いて いますから、あるいはこのときまでは花沢館が現役であった可能性も、考えられなく はないと考えています。 |
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花沢館跡を望む。 | |
主郭のようす。 | |
主郭最後尾の土塁。 | |
主郭背後の堀切。 | |
同上。 | |
本丸下の帯曲輪と本丸土塁。 | |
途中にある2番目に広い曲輪。 | |
尾根筋の削平地群。 |