鍋山城(なべやま) | |
別称 : なし | |
分類 : 山城 | |
築城者: 鍋山安室か | |
遺構 : 石垣、曲輪、土塁、堀 | |
交通 : JR高山本線高山駅からバスに乗り、 「漆垣内公民館前」下車徒歩20分 |
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<沿革> 天文年間(1532〜55)に、三仏寺城主平野豊後守安室によって築かれたとするのが 一般的であるが、室町時代初期の築城とする説もある。安室は山名を取って、鍋山氏 を称した。まもなく三木氏の勢力が伸長すると、安室はその軍門に降り、三木良頼の 次男顕綱を養子とした。 時期は定かでないが、顕綱の兄三木自綱(姉小路頼綱)が家督を相続した元亀三年 (1572)以降に、顕綱は義父安室を毒殺し、安室の妻小峯の方と子の左近大夫を追放 した。名実ともに鍋山氏を掌握した顕綱は、頼綱の嫡男信綱の後見も務めるなど兄の 勢力拡大に大きく貢献した。 しかし、八日町の戦いで悲願の飛騨統一を成し遂げた翌天正十一年(1583)、顕綱は 兄頼綱によって妻もろとも暗殺された。信綱も同じころに殺害されており、頼綱の家中 掌握の一環であったと推測される。鍋山城は頼綱の次男秀綱が預かったが、秀綱は 信綱に代わる嫡子となったため、三男の季綱が城と鍋山氏の名跡を受け継いだ。 天正十三年(1585)、羽柴秀吉の命を受けた金森長近が飛騨へ攻め入ると、季綱は 兄とともに松倉城に立て籠もった。奮戦むなしく松倉城は落城し、姉小路氏は降伏を 余儀なくされた。鍋山城で戦闘があったのかは不明である。 戦後、飛騨一国を与えられた長近は、鍋山城を居城とした。実際に居住して城下の 整備なども行ったとされるが、平地に乏しく交通の便に優れているともいえないため、 天正十六年(1588)から高山城の改修に着手した。長近がいつ高山へ移ったのかは 定かでないが、居城の移転を以て鍋山城は廃城となったものと推察される。 <手記> 高山市街から国道158号線を東方へ向かうと、目の前に現れる特徴的な独立山が 鍋山城址です。首都圏側から安房峠を越えて高山入りする場合も、鍋山の麓を通る ことになります。鍋山の名前は、3本足の鍋をひっくり返したような形に由来していて、 城域も最高所の大鍋山の本丸と、西側の下鍋山の二の丸、そして南側の小鍋山の 出丸から成っています。 南東麓の四天王神社の脇から登山道が整備されていて、途中「屋敷跡」という石の 標柱のところを左折すれば、大鍋山と小鍋山の間の鞍部にたどり着きます。鞍部下 には屋敷というより番所のような削平地があり、鞍部には土塁が設けられています。 大鍋山とは別に、出丸へはそこから50mほど登らなければならず、もう1つ別の山城を 麓から上がっていくような感じです。 出丸へは明確な登城路はなく、赤テープがあるもののあまり当てにはならず、ほぼ 直登を余儀なくされます。登りきると帯曲輪と切岸が見られ、そして山頂は櫓台状の 塚となっているものの、全体的に造作ははっきりしていません。おそらく金森氏による 改修の手は、ほとんど入っていないのでしょう。 そして、鞍部へ戻って反対側を70mほど登ると、大鍋山の石垣が現れます。本丸の 最前面虎口に施されたものとみられ、内側はコの字型となっています。石垣に喜んだ のも束の間、その向こうは比較的自然地形が続いていて、曲輪造成の痕跡があまり みられません。曲輪の区分けがあるのかないのかわからないまま、細長い峰を進む と、頂上の本丸標柱に到達します。頂上についても、櫓台か何かとして整備されて いるようにも見えず、なんとも未消化感が残ります。 本丸から二の丸へは、出丸と異なり、ほとんど苦労はありません。ただし、やはり 造作は曖昧で、帯曲輪状の平場や虎口とも思えるような地形がかろうじて見られる 程度です。 全体として、石垣のほかは近世的な要素がまったくなく、長近が本当にこんな城に 3年も腰を据えていたのか甚だ疑問です。飛騨国内でも、古川の小島城や古川城 の方がよほどしっかり整備されています。後に増島城を築いていることからも、長近 はかなり早い段階から鍋山には見切りをつけ、とりあえず古川の古城を取り立てて、 その後に高山城や松倉城を大々的に改修したという順序で考えてはどうかなという のが、個人的な感想です。 |
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東から鍋山城跡を望む。 右側が本丸のある大鍋山。 左側が出丸のある小鍋山。 |
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屋敷跡の土塁か。 | |
大鍋山・小鍋山の間の鞍部土塁。 | |
鞍部から小鍋山を見上げる。 |
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小鍋山付け根の堀切。 | |
出丸の帯曲輪。 | |
出丸頂部の櫓台状地形。 | |
大鍋山の石垣。 | |
同上。 | |
石垣上のようす。 | |
本丸内のようす。 | |
同上。 | |
同上。奥が頂部。 | |
頂部の本丸標柱。 | |
二の丸の標柱。 | |
二の丸の帯曲輪状の平場。 | |
二の丸の虎口状地形。 |